マーケティング上手!?ビームス(BEAMS)の戦略とは

マーケティング上手!?ビームス(BEAMS)の戦略とは

イーコマースが広く利用されるようになったことにより、アパレル業界での競争はより激しさを増しました。それと共に、マーケティングを通じて独自色を打ち出すことは、他社との差別化を図る上でも特に重要になったといえます。

アパレル業界におけるマーケティングの中でもビームス(BEAMS)が行っているマーケティングは、極端かつ絶妙である点で大きな特徴があり、定評もあります。今回はそんなビームスのマーケティングを功罪も含めて解説します。

ビームスの得意なマーケティング手法とは

アパレル業界に限った話ではありませんが、マーケティングにおいてはその時代の社会情勢やトレンドが考慮されるのが一般的です。例えば、少子高齢化が顕著になった昨今では、「どうすれば高齢者を取り込めるか」ということがマーケティングにおける大きな課題となり、そのことはアパレル業界に関しても同様です。

また、アパレル業界のようなトレンドの影響を受けやすい業界では、マーケティングにおいて、「その時代のトレンドに合った商品をいかにして多く売るか」ということに終始しすぎるため、どうしても時代の流れに対して受け身になりがちという特徴もあります。

これらに対してビームスのマーケティングでは、顧客のニーズや社会情勢、トレンドなどをある程度把握しつつも、必ずしもそれらに流されない能動的な姿勢を取っているといえます。例えば、ビームスの「数年後のための種をまき、そこから誕生したカルチャーに顧客を巻き込む」という考え方には、このような能動性が大いに表れているといえます。

乱暴とも思える割り切り方~ビームスのターゲティング

マーケティングでは、ビームスのような能動性を重視するより、その時代のトレンドに適応していくというやり方のほうが簡単です。そのため、能動性を重視するビームスのマーケティングではさまざまな課題が生じ、それらを克服するためにはセオリーに則さない乱暴ともいえるほどの割り切りが必要となることもあります。

例えば広義的なカジュアル系アパレルブランドでは、より多くの顧客をターゲットとするため、メンズとレディースの両方の商品を取り扱うだけでなく、子ども服や着る人の年齢を選ばないシンプルなデザインの商品なども多く取り扱います。また、ターゲットを限定しすぎてしまうことはブランドとしての評判を落としかねないことから、評判が売り上げを左右するアパレル業界において、できるだけ多くの人をターゲットとすることは今やマーケティングにおける基本的なセオリーになっているといます。

しかし、ビームスでは、格差社会化が顕著になった現代の日本において、あえて中流以上だけをターゲットにするという大胆な戦略を取っており、そのことによってビームスというブランドのカラーを広くアピールすることにも成功しています。

コンテンツをあやつるビームスの手法

通常、アパレルブランドのマーケティングでは、そのブランドの取り扱っている商品がどのようなニーズを満たせるのかを顧客に広く知らせることが基本的な目的となります。よって、その中心には常に顧客のニーズとそのブランドの商品が存在するといえます。

一方、ビームスが行うマーケティングでは、必ずしもその中心に顧客のニーズや商品があるわけではなく、独自のコンテンツを自在に操った自由な発想にもとづくマーケティングが行われています。その一例として挙げられるのが、同社が2016年10月に発表したショートフィルム「TOKYO CULTURE STORY 今夜はブギー・バック(smooth rap)」です。

5分間という広告としてはかなり長いようにも思えるこの動画は、東京を舞台に40年間のトレンドの移り変わりを振り返る内容となっています。多数の有名ミュージシャンも参加したことから大きな話題となったこの動画は、公開から1ヵ月を待たずして再生数が400万回に達し、新たなトレンドを作るというビームスのメッセージを短期間で多くの人に伝えることに成功しました。

このような独自のコンテンツを利用したビームスのマーケティング手法は、ブランドとしての枠を超えた「新たなトレンドの創生」という理念を表現しながら、押しつけがましさを感じさせない控えめな仕上がりとなっており、それ自体がマーケティングの新たなトレンドを作り出しているといえるかも知れません。

ビームスの今後とマーケティングの方向

合併や買収を繰り返すことで規模を拡大していく企業は多く存在します。とりわけビームスのような規模の大きい企業であれば、他のブランドを買収することで規模の拡大を図ることは困難ではないでしょう。しかし、ビームスでは規模を拡大することだけを目的とした合併・買収の可能性を否定しており、ブランドとしての独自色を守ることを重視していることが窺えます。

このことから、ビームスでは今後もマーケティングにおいては「ビームスだからできること」を率先して行い、ブランドとしてのカラーだけでなく、ブランドの枠を超えたトレンドも作り出していくことを目指していくことが予想されます。

まとめ

ビームスでは海外事業の展開も行っており、最近では台湾や英国に進出したことも話題となりました。また、独自色を重視するビームスがイーコマース事業をどのように発展させていくかは、この業界全体にとって大きな関心事であるため、その展開は今後も注視していく必要があるでしょう。

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