IoTとは「Internet of Things」を略した言葉で、日本語だと「モノのインターネット」と訳されます。すべてのモノがインターネットにつながることによって、私たちの生活をよりよいものにしていこうとする仕組みです。
すでにIoTは私たちの生活に密着しつつあり、パソコンやスマートフォン、タブレットなどといった端末だけでなく、家電や自動車などもインターネットに接続されるようになっています。
アパレル業界でも、IoTはすでに活用されており、これまでにできなかったようなことを実現して、イノベーションを起こしています。ここでは、アパレル業界がIoTでどのようなことを実現させているのか、詳しくご紹介していきます。
アパレル業界におけるIoT導入事例
アパレル業界におけるIoTの導入事例として、主にあげられるのは、店舗のIoT化とデジタル採寸があります。
店舗のIoT化
従来は、店舗で実際に販売された商品についてレジで記録するPOSデータによって、購入された商品や購入した人の属性などを分析して販売促進に活用してきました。しかし、アパレル業界が本当に知りたかったのは、店舗を訪れたものの、購入しなかった非購入者の情報です。その分析を可能にしたのが、店舗のIoT化なのです。
具体的には、ビデオによる来店者の画像解析や、スマートフォンなどの端末のWi-Fi検出機能などをPOSデータと連携することによって、非購入者も含めた来店者の情報を蓄積します。この分析により、キャンペーンによる入店者数の把握や、販売機会を逃さないようなスタッフ配置など、従来は打ち出せなかった新しいマーケティング戦略を可能にしました。
なお、画像解析では、プライバシーに配慮するため、個人を特定せずに年齢や性別などの属性に関する情報のみを取り扱い、解析後はデータを破棄する仕組みになっています。
来店者の分析により、効果のある施策を打つことで、来店率やリピート率を上げ、その傾向に合わせて販売スタッフの人員や配置を最適化することで、コストパフォーマンスを向上させることも可能です。
デジタル採寸
アパレル業界のIoT導入事例では、ZOZOTOWNが取り入れたことでよく知られているデジタル採寸をあげることができます。センサーを内蔵したボディスーツを着て、スマートフォンのアプリと連動させるだけで、すぐに自分の体型サイズを測ることができる技術です。
自分の体型データに合った服を購入できるようになります。
従来は、ECサイトで購入した商品のサイズが合わない場合、返品された商品を新しいサイズのものと交換して再配達したり、そのまま顧客が離れていったりすることもありました。それがなくなることが期待できるうえに、採寸したデータと購入履歴を組み合わせることで、マーケティングの最適化も可能となってきました。
アパレル業界における問題点はIoTが解決する
アパレル業界の問題点とは?
・他人にサイズを測ってもらうのは恥ずかしい
他人に自分の体のサイズを測ってもらうことを、恥ずかしいと感じる顧客は少なくありません。自分に最適な服を選びたいものの、他人に正確に自分の体型を知られるのはイヤだという方は多く、だいたいのサイズ感で服を選ぶことで妥協している部分がありました。
・ECサイトで購入するのは不安
ECサイトで服を購入するのには、ある一定の不安要素がありました。サイズが合わないことに加え、実際に着たときに似合うかどうかわからないという不安などです。
IoTがアパレル業界の問題点を解決する
・店舗でサイズを測ってもらう必要がなくなる
上述したデジタル採寸の技術により、店舗に出向いてスタッフにサイズを測ってもらうことなく、自分の正確なサイズを知ることができるようになります。ECサイトで自分の体型データにフィットする服を購入することができれば、サイズが合わないことについての不安も解消できるところは大きく、スムーズに買い物できるでしょう。
・実際に着なくても着た印象を知ることができる
次にご紹介するスマートマネキンの導入により、実際に店舗で試着しなくても、気になる服を着たときの自分の印象を知ることができるので、似合うかどうかという不安も解消できます。
・店舗のコストパフォーマンスと売り上げアップ
店舗のIoT化が進むにつれて、アパレル業界の実店舗は大きな影響を受けつつあります。次にご紹介するスマートクロスハンガーによって、来店者が知りたい情報を自動的に提示することができるようになり、スタッフの配置を抑えることで、店舗のコストパフォーマンスの向上につなげることができます。そして、来店者にとって知りたい情報をその場で提供することにより、聞きたいことがある時に、接客中のスタッフを待つ時間から解放されることで、売り上げアップにもつながるでしょう。
IoT技術でこれから期待できるイノベーション
上述したスマートクロスハンガーや、デジタル採寸をもとにしたスマートマネキンといったIoT技術は、今後のアパレル業界にイノベーションを起こすことが期待できます。
スマートマネキン
店舗に行って、気になる服を試着するのを面倒に感じる人は、意外に多いものです。そんな面倒くささを解消するため、実際に試着しなくても、その服を着たときの自分の印象を知ることができるIoT技術が、スマートマネキンです。
体を3Dスキャンすると、マネキンのサイズが自分のサイズに変わり、自分が気になる服を着たときの印象を知ることができます。実際に試着して鏡で見るより、自分の姿を客観的に判断することも可能なので、本当に自分に似合う服を選ぶことができるのではないでしょうか。
スマートクロスハンガー
来店した顧客は、店舗に並べられている服を眺めながら、気になる服を手に取って見るという行動をとります。従来はその様子を確認したスタッフが、声をかけたりしていたものでした。
スマートクロスハンガーというIoT技術では、顧客が手に取った服をセンサーが認識して、目の前にあるディスプレイに、その服の価格や詳しい情報、コーディネートなどが表示されます。気になる服の情報を即座に提示することで、間をおかずに顧客の購買意欲をかきたてることが可能になると期待されています。
IoTはVR/AR・AIと連携も可能
IoT技術をVR/ARやAIと連携することによって今後は以下のようなことも実現できるようになり、さらなるイノベーションが期待できます。
AIによるビッグデータの分析とサジェスト
IoT技術にAIを連携することにより、ユーザーが登録するスナップ写真などのビックデータを分析し、AIが類似商品やコーディネートのサジェストをおこなってくれます。
画像からの商品検索
ファッション雑誌やSNS、実際に着ている人などで気になる服を見つけたら、その画像からすぐにオンラインで商品検索をすることができます。
チャットシステム
ECサイト上にチャットシステムを構築し、顧客とオンライン上で1対1のやりとりをすることができるようになることで、サイトからの離脱防止や売り上げ向上につながります。
VR/ARによる店舗や商品の映像配信
IoT技術をVR/AR(仮想現実/拡張現実)と連携することによる映像配信で、店舗に実際に行かなくても、気になる商品を試着した自分をリアルに体験することができます。
まとめ
アパレル業界におけるIoT技術の導入が進むことによって、ECサイトでの買い物がスムーズになったり、店舗の人員の配置を最適化したりなど、販売促進やコスト削減が期待できます。さらなるIoT技術やAIとの連携によって、これから起こるイノベーションを想うと、わくわくするような感覚をおぼえるのではないでしょうか。