三陽商会の自社ECサイトが成功した理由

三陽商会の自社ECサイトが成功した理由

ZOZOTOWNのような大手ファッション通販サイトの台頭により、現在では規模の小さいアパレルブランドでも簡単にECに参入できるようになりました。しかし、より多くの販売経路を確保し、利益を上げるためには自社ECサイトの運営も選択肢のひとつとして考える必要があります。

「ポールスチュアート」をはじめとしたブランドで知られる三陽商会の自社ECサイトは、アパレル系の自社ECサイトの中でも特に高い比率で売り上げを伸ばしており、これから自社ECサイトを設立しようと考えているブランドにとって、その成功例は大いに参考となるでしょう。今回はそんな三陽商会における自社ECサイトの成功の理由について考えてみたいと思います。

「三陽商会」とはどのような企業?

まずは今回取り上げる三陽商会について確認しておきましょう。

1942年に設立された三陽商会は翌年に株式会社となって以降順調に業績を伸ばし、1949年には大手百貨店への販売を開始することでその知名度を急速に上げました。当初はファッション系企業とはいえ、取り扱う商品は主にレインコートなどに限られていましたが、1969年に総合アパレル化を開始したことで早い時期から現在のブランドイメージの基盤を築きました。

その後は国内だけでなくニューヨークや上海にも現地法人を設立することでその規模を徐々に拡大していき、2008年に公式オンラインストア「SANYO I Store」をオープンしたことで本格的にEC業界にも参入しました。

現在三陽商会では、ポールスチュアートをはじめ、「エポカ」や「ギルド プライム」「ラブレス」といった数多くのブランドを取り扱っており、男女問わず幅広い層から支持を得ています。また、2018年前期の売上高は他社モール経由が13億円であるのに対し、自社ECが37億円となっており、自社ECサイトがECでの売り上げの7割強を占めるという特徴的なデータが表れています。

三陽商会の自社ECサイト「SANYO I Store」の特徴

三陽商会では2016年9月に店頭と自社ECサイト「SANYO I Store」での顧客情報とポイントの統合を行い、双方が連携した運営を行うことが可能となりました。このことから、現在では店頭とSANYO I Storeで利用できるポイントサービスが定着しており、このことは同社のECにおける大きな特徴のひとつとなっています。

また、SANYO I Storeでは店頭と連動した在庫の管理も行っており、EC側で欠品となった商品への注文に店頭在庫を充てるといったことも可能となりました。このことから、在庫切れになりにくく、ユーザーにとっては欲しいと思った商品が手に入りやすいというメリットがある点は多くの他社ECにはないSANYO I Storeの特徴のひとつといえるでしょう。

「SANYO I Store」売り上げアップの理由とは?

三陽商会では店頭とECでの顧客情報とポイントの統合を行った2016年9月からECでの売り上げが好調を維持するようになり、2016年は42億円、2017年は50億円、2018年は65億円(計画)と順調に売り上げを伸ばすことに成功しました。また、このうち自社ECサイトのSANYO I Storeでの売り上げは2017年が31億円、2017年が37億円、2018年が45億円(計画)と全体に占める割合が非常に高く、自社ECがEC全体を先導しているといえます。

このように自社ECサイトでの売り上げを順調に伸ばし続けることに成功した理由としては、上述したポイントサービスのECと店頭での連動が挙げられます。これは単にEC利用で得たポイントを店頭でも利用できるという直接的なことだけでなく、従来は店頭、あるいはECのどちらかしか利用したことがなかった顧客に両方を利用してもらえるようになるという点でも大きなメリットがあり、ECと店頭を併せた見込み客の延べ人数を増やすことにも大いに貢献しました。

また、この他にも三陽商会での自社ECサイトの成功には、ECサイト限定のPBブランド商品の販売や、上述したECと店頭の連動を活かしたお取り寄せ購入などが大いに関係しているといえるでしょう。

自社ECサイトの売り上げアップに必要なこと

以上のことから、三陽商会の成功例からは、以下のことが自社ECサイトでの売り上げアップにおいて有効と考えることができます。

実店舗との共有キャンペーン

自社ECサイトの顧客を増やすためには、既にそのブランドのファンとなっている実店舗の顧客に自社ECサイトにも興味を持ってもらう必要があります。三陽商会のようなポイントサービスの連動は、そのために有効な手段といえますが、さらに視野を広げ、ポイントサービスにとどまらない実店舗との共有キャンペーンを実施してみるのも有効です。

実店舗と連動した在庫管理

実店舗と連動した在庫管理は機会損失を防ぐという意味でも売り上げアップにおいて大きな意味を持ちます。

EC限定品の販売

自社ECサイトへ興味を持ってもらうためにはEC限定商品を販売するのもよいでしょう。特にPBブランド商品は安価での販売も可能なため、ブランドカラーを知ってもらえるだけでなく、送料無料の条件を満たすためのついで買いによって顧客単価を上げることもできるため、より有効な手段といえます。

まとめ

特にアパレル業界では、実際に商品を手に取ることができないといった理由からECサイトでの購入に抵抗を感じている顧客も一定数存在し、実店舗の存在価値は今後も高い状態が続くことが予想されます。そのため、ECサイトでの販売を行うアパレルブランドにとっては、ECサイトの独自性を活かしつつ、実店舗との連携を図ることが売り上げアップを目指す上で不可欠です。三陽商会の成功例はその典型となっており、モデルケースのひとつとして捉えると、これからECサイトの展開を本格化することを検討し、マーケティングなどを行っている段階のブランドにとっては大いに参考となるでしょう。

 

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