D2Cで成功しているブランド事例

D2Cで成功しているブランド事例

最近ではB2BやB2C、さらにはC2Cに至るまで、さまざまなマーケティング手法が確立され、商品を売る方法の多様化がビジネスそのものの在り方にも大きな変化を生じさせています。そんなマーケティング手法のひとつである「D2C」は、質の高い商品をリーズナブルな値段で売ることに長(た)けており、近年、アパレル業界においてもこの手法を取り入れる企業が増加しているようです。今回はそんなD2Cの概要、成功事例、失敗事例を見ながら、D2Cを成功させるためのポイントについて考えてみたいと思います。

アパレルEC業界のトレンド!D2Cの強みとは

D2Cとは「Direct To Consumer」の略語で、「DtoC」と表記されることもあります。「Consumer」とは消費者のことを指し、メーカーが卸業者や量販店などを介さず、消費者に直接商品を販売するスタイルは、総じてD2Cと呼ばれるようです。

通常、アパレル業界に限らず、商品を売る際にはメーカーと消費者の間にさまざまな業者が入ることとなり、これによって商品の販売価格には各業者のもうけ分が上乗せされます。そのため、消費者が商品を購入する段階では原価に比べてはるかに高い値段設定がされていることも少なくありません。しかし、D2Cで商品を販売すると間に業者が入らないため、商品を低価格で販売できるのです。

また、メーカー側はD2Cによって自社商品を購入する消費者の情報を直接集められるようになることから、例えば自社ECサイトでD2Cを導入すれば、個々の消費者の購入履歴に応じて別の商品をおすすめするといった施策につなげることもできます。

とりわけアパレル業界では、「低価格での販売」と「消費者に関する情報の収集」という2点がメーカーにとって大きなメリットとなるため、特にECを行っているアパレル企業では積極的にD2Cを導入しているのです。

D2Cの先駆者となったブランド

続いて、D2Cの先駆者となった2つのブランドをご紹介します。

・Warby Parker

「Warby Parker」はペンシルベニア大学に通う4人の学生によって2010年に立ち上げられた眼鏡ブランドです。同ブランドは、特に創業時には外部業者を排除することにこだわり、企画から製造、販売にいたるまで、あらゆる業務を自社で行っていました。

また、同ブランドの初期の経営スタイルは商品の品質に徹底的にこだわり、商品ラインナップは10~20種類程度にまで厳選していたという特徴があったのです。D2Cの「質の高い商品を低価格で販売できる」という強みを最大限に活用できる方針を採っていたことが成功の要因になったといえるでしょう。

・Bonobos

早くからD2Cを導入していた「Bonobos」は2007年創業のブランドです。アパレルブランドでありながら取り扱う商品はチノパンをはじめとしたメンズパンツのみという特徴があり、サイト公開後半年で約450万円を売り上げ、その後も順調に成長を続けました。

こちらのブランドはカスタマーサービスに力を入れ、オンライン上での接客の質を高めることに注力したため、多くの顧客を獲得したといわれています。このように、D2Cでは顧客と直接取引をすることから、商品そのものの質や価格だけでなく、サービスの質によっても満足感を与えられるという強みがあると早くから認識していたことが、同ブランド成功の要因になったといえるでしょう。

D2Cで成功している注目のブランド

以下のブランドではD2Cを独自の理論・方法のもと展開することで成功を手にしており、D2C導入を検討している企業であれば、ぜひ注目したいブランドといえます。

・Everlane

ECサイトでファッションアイテムの販売を行う「Everlane」は、商品の製造過程の透明化を目指し、商品ごとにかかるコストの内訳を公表するという方針を採っています。これにより、消費者はコストの内訳と販売価格を比較し、それに納得した上で商品を購入できることから、D2Cならではの「中間業者の排除によるコストの削減」と「低価格での販売」というメリットをより強調することに成功したといえます。

・CUYANA

エクアドル人とインド人の女性2名によってサンフランシスコで誕生した「CUYANA」は、素材から製法にいたるまで徹底的にこだわった高品質な商品を取り扱うと同時に、すべての製造工程をアメリカ国内で完結させることも重要視しています。

これにより、同ブランドはD2Cの強みである「高品質な商品の低価格販売」を国内の職人の育成につなげるという方針を消費者に対して示したのです。同時に、消費者は同ブランドを選ぶことで高品質な商品を手に入れられるだけでなく、国内の職人の育成にも貢献できるという満足感を得られるビジネススタイルを確立しました。

・Allbirds

「Allbirds」はサンフランシスコに本社を置き、スニーカーを主力商品としたブランドです。同ブランドのスニーカーは、ニュージーランド産のメリノウールと呼ばれる高品質なウールをイタリアの工場で製造するというグローバルな展開を行っているという点で、D2Cを導入したブランドの中でも異彩を放っています。

同ブランドのスニーカーは高品質なウールならではの履き心地が好評で、品質の高さが大きな魅力になるD2Cの特長を有効に活用しているといえるでしょう。

・10YC(テンワイシー)

「10YC」は10年間着続けたいと思える服を販売することをテーマに掲げた日本のブランドです。安さが重視される国内のアパレル業界において、D2Cを活かした「高品質な商品の、適正価格での販売」を目指しており、大きな注目を集めています。

失敗事例から学ぶ成功のポイント

以上のブランドの成功事例を見ていくと、D2Cは汎用(はんよう)性が高く、取り扱う商品の特徴などに合わせて微調整を行っても成功を手にしやすいという傾向があるといえるかも知れません。しかし、以下のようなD2Cにおける失敗事例も存在するため、導入計画を立てる際には慎重に検討する必要があります。

・商品力の欠如が招いた失敗

とあるブランドでは海外企業の商品を日本国内で販売するためにD2Cを取り入れたECサイトの運営を開始しました。しかし、マーケティング手法以前の問題として、その商品が日本人の需要に合っておらず、大きな損失を招く結果となってしまったのです。

この事例では商品そのものが日本での販売に適さなかったことが失敗の要因といえますが、D2Cの観点から考えると、いくらD2Cを導入しても商品力が乏しいと、D2Cの「高品質な商品を低価格で販売できる」という強みを活かせないことが失敗を招く要因になるといえそうです。

・D2Cを導入することだけが目標になってしまうことで生じた失敗

別のとあるブランドでは、ECサイトにD2Cを導入したものの、導入後の具体的なビジョンがなく、D2Cそのものを活かせなかったという事例もあります。D2Cはそれ自体が画期的なものに見えることから、導入すること自体が目的になってしまうこともあるようです。D2Cをどのように活用するのかをよく考え、ビジョンを明確にしておくことが重要といえるでしょう。

まとめ

D2Cはただセオリーに沿って導入すればよいわけではなく、自社製品の特徴や会社としてのコンセプトに合った活用方法を検討することが重要です。そのためには、日々ユーザーの動向に注意し、ターゲット、商品、マーケティング力などを見直すと同時に、具体的な導入・運用計画を立て、ポイントを押さえながら効果的な導入を図る必要があります。

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