広大な大陸に販売網を広げる中国のECサイト。その特徴とデザインは?

広大な大陸に販売網を広げる中国のECサイト。その特徴とデザインは?

アリババをはじめとしたECサイトの飛躍的な普及に象徴されるように、中国では広大な大陸全土に販売網を広げる大規模なECサイトの存在感が急激に増し、さらには中国国外からも利用されるケースが多くなっています。

このような中国国内における傾向は、アマゾンなどの大規模なECサイトの世界規模での成功に追随する形で、より顕著になったことが考えられます。その一方でサイトデザインという側面においては独自のスタイルがとられており、その特徴は日本や欧米とのサイトデザインとも大きく異なります。

ここでは中国におけるECサイトのデザインの傾向を、日本のサイトデザインと比較すると同時に、具体的な事例もいくつか挙げ解説していきます。

急成長する中国のアパレルECサイト!世界第二位の市場

中国におけるアパレルブランドの成長は近年特に著しいものがあり、「熱風(hotwind)」、「MJstyle」、「UR」などといった特に有名なブランドの存在をご存知の方も多いことでしょう。実際、中国のアパレル市場は世界第二位の規模を誇るともいわれており、中国国内における有名アパレルブランドへの需要が特に高まっていることがうかがい知れます。

一方でこれらのアパレルブランドは販売網拡大のためにECサイトの運営も行っていますが、ユーザビリティなどが最優先に考えられた欧米や日本のECサイトとはやや様相が異なります。中国国内におけるこれらのアパレルブランドのECサイトは、そのデザインなどにおいてユーザビリティが十分に考慮されていないことが容易にうかがい知れるほど、未熟な部分が目立ち、我々日本人からするとウェブデザインという観点において若干の古臭さを感じてしまうことは否めません。

そのため、これらのアパレルブランドによるネットを利用した商品の販売は、アリババなどのショッピングモールに依存している部分が強く、独自のECサイトの運営という点において、中国は過渡期の状態にあるといえそうです。そのため、いずれ中国のブランドが独自のECサイトを運営し、なおかつコンテンツの充実化を図ることによって、その規模を国外にまで広げ始めることは確実と考えられます。

熱風ECサイトに見るデザインのシンプル指向

国外にまで販売網を広げ始めたアリババは、サイトのデザインという点においても欧米とは異なる多色・混雑でありながら、閲覧者に情報が伝わりやすいというメリットを前面に打ち出すことに成功しています。その一方でアパレルブランド「熱風」のECサイトは中国国内向けの工夫と欧米式のデザインが共存しており、我々日本人にとっても興味深い点がいくつか見受けられます。

熱風のECサイトを見たときにおそらく多くの人が最初に感じるのが、単色の文字と大きな写真を使用したデザインのシンプルさでしょう。世界的に幅広く使用されているフラットデザインの「シンプルで分かりやすい」というメリットを最大限に活かすために構図などが決められたことがうかがい知れます。

しかしながら、その一方で熱風のECサイトには色彩や構図、写真の扱い方などにどこかちぐはぐな印象があり、全体的にこなれていない感じがすることは否めません。特にデザインにおいては、マルチバイト文字の漢字がベースになるにもかかわらず、アルファベットがベースとなる欧米基準のフラットデザインが採用されており、そのアンバランスさがデザイン性を大きく損なっています。

フランス生まれ?レディースウェアブランド「MO&Co」のおしゃれなデザイン

中国でも高い人気を誇るアパレルブランド「MO&Co」のECサイトは、中国語表記も選択できるものの、基本的には英語表記となっており、一見しただけでは中国国内向けのサイトだとは分かりません。また、デザインにおいてもモノトーンを多用したフラットデザインをうまく使いこなしており、「熱風」のような違和感もありません。

しかしながら、このMO&Coはもともとがフランスで設立されたブランドであることから、そのECサイトがこのようなデザインになるのは不思議なことではありません。また、特に欧米におけるフラットデザインをそのまま使用したようにも見えるフォントやエフェクトは、欧米風の洗練されたイメージをブランドに対して持ってもらうために利用していることも考えられ、サイトのそのものが必ずしも旧来の中国的な好みに迎合しているわけではないということが分かります。

また、このことは中国国内においても欧米の洗練されたイメージに対する憧憬は顕著になっており、MO&Coというブランド自体が上海などの特に洗練された発展を遂げたエリアをターゲットにしていると言い換えることもできるでしょう。

アパレルはショッピングモールが主力?サイトではデザインの強みを活かせない!

広大な中国におけるアパレル展開はネットを中心に大きく成長していますが、その一方で中国における独自のECサイトを運営しているブランドの数は決して多くはなく、その殆どは一部の規模の大きなブランドに限定されます。そのため、各ブランドはタオバオワン、天猫国際、唯品国際などのショッピングモールを利用してネット上での商品の販売を行っており、最近では海外ブランドも積極的にこれらのショッピングモールを利用したネット販売に参入しています。

このようなタイプのショッピングモールは日本国内においては楽天市場などが有名ですが、それを利用したネット販売では、サイトそのもののデザインが単一化されており、ブランド側ではサイトのデザインを大きく変更できないというデメリットもあります。そのためデザインの強みを活かせず、ブランド独自のイメージを打ち出すという点においてはショッピングモールの利用は適していないといわざるを得ません。

しかし、いつまでもイメージ戦略が重要なアパレルブランドが、独自のサイト運営を放棄し、ショッピングモールに依存するとも考えられません。やがて中国の莫大な人口と購買層を取り込むため、独自のデザインを持ったECサイト構築へ向かうことは必至です。今以上に中国国内と国外におけるECサイトのデザインの重要性に大きな違いが表れることが予想されるのです。

中国ECサイトの特徴まとめ

日本人の感覚では、アパレルブランドのECサイトはおしゃれで洗練されたデザインが施されているほど多くの顧客を集められると考えがちですが、中国では必ずしもそうとはいい切れず、そのような感覚の違いがサイトのデザインにも反映されています。そのため、日本人にとっては全く異なる基準でデザインを行わなければならないという点から、安易な気持ちで中国国内への事業参入を図ることはできません。しかしながら、今後の発展を考えると中国国内の市場は決して見逃せない存在といえます。

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