ウェブサイトのデザインはUIを構成する要素として近年は特に重要視されています。しかしながら、日本国内におけるウェブデザインと欧米におけるウェブデザインの間には、その傾向において大きな違いが生じるようになってきています。
ここでは、欧米におけるウェブデザインのトレンドについて解説すると同時に、その原因にもなっている思想などのバックグラウンドについてもご紹介し、なぜそのようなトレンドが発生したのかを明確にしていきたいと思います。
欧米における言語とデザインの関係
欧米におけるウェブデザインについて考える際に意識しなければならないことがあります。当然のことではありますが、使用する文字がアルファベットであるということです。
アルファベットをデザインという側面から見た場合、文字のパターンは大文字と小文字を合わせて52パターンのみであるため、文章として見たときに見づらさを感じさせません。そのため、アルファベット自体がデザイン性に優れているといえます。一方、日本における漢字、カタカナ、ひらがなの組み合わせは無尽蔵で、それらによって構成される長すぎる文章は、しばしば読み手をうんざりさせる傾向にあります。
このようなアルファベット特有のデザインという側面から見た長所は、ECサイトにおけるデザインにも活かされています。特にアルファベットは、上述の通りそれ自体にデザイン性が優れているという特徴があることから、商品に関する情報を商品の写真の下部などに、多めに記載しても見やすさを損なうことがなく、文字でしかカスタマーに伝えることができない情報を効率よく伝えることが可能です。
すっかり定着したフラットデザイン
情報過多になりすぎたウェブ上において、無駄なものが省かれ、一見したときのインパクトを効率よく見る者に与えることができるフラットデザインという概念が普及し始めたのは、それほど昔のことではありません。Windowsにおいて、フラットデザインが採用されたのはWindows 8からで、その概念がより一般的に広まったのはここ数年のことと考えて問題ないでしょう。
フラットデザインが普及したきっかけとしては、従来はPCのみに限定されていたデバイスが、スマホやタブレットなど、多岐にわたるようになり、画面の小さなスマホなどのデバイスでもストレスを感じずにウェブサイトを閲覧してもらえるようなデザインが必要とされたことが、多くのデザイナーの指向を変化させたことが挙げられます。
その結果、今日ではウェブデザインだけでなく、スマホなどで表示されるアイコンのデザインにおいてもフラットデザインの概念が重視されています。「見やすさ」と「分かりやすさ」の両面において大きな意義があるといえます。
フラットの問題を解決?マテリアルデザインの台頭
フラットデザインが多くのウェブデザインにおいて採用されるようになったことで、フラットデザインがはらむ「見やすさ」、「分かりやすさ」といったメリットによる恩恵は多くのユーザーが受けることとなりましたが、その一方で見やすさや分かりやすさを強調しようとするあまり、デザインがシンプルになりすぎてしまい、逆に本来伝えるべき情報がユーザーにうまく伝わらなくなるといった事象も生じるようになりました。そして、フラットデザインが持つシンプルさは、度を過ぎるとデメリットになりかねないということが明らかになってきたのです。
このようなフラットデザインがはらむデメリットを補う形で、新たに誕生したのがマテリアルデザインです。マテリアルデザインは、フラットデザインが持つ「見やすさ」や「分かりやすさ」といったメリットを継承しながらも、デザインに奥行きや陰影を加味することによって、ユーザビリティのさらなる向上を実現しており、ウェブデザインにおいても使用されることが多くなりつつあります。
スマホがベースになるウェブデザインの今後
フラットデザインからマテリアルデザインに至るまでのウェブデザインの変遷は、ここ数年で特に顕著に見られます。その原因としては考えられるのは、上述したデバイスの多様化です。特にスマホの急激な普及が、これらのウェブデザインの変遷にも大きな影響を及ぼしていることは間違いありません。今後は特にスマホの特性に適応したデザインが主流となることが予想されます。
スマホの特性に適応したウェブデザインにおいて気を付ける点については、スマホ向けアプリのアイコンを参考にしてみると分かりやすいでしょう。スマホの画面はPCに比べて小さいことから、シンプルで情報が伝わりやすいフラットデザインが重視されるようになったことは上述しましたが、このことはアプリのアイコンのデザインにおいても同様となっています。
例えば鳥の形をしたツイッターのアイコンの認知率が非常に高いことは容易に想像がつきますが、このことにはアイコン自体のシンプルなデザインも大きく影響しています。今後はシンプルで分かりやすく、一目見ただけで情報が伝わるデザインがウェブデザインにおいても重視されるべきであることが分かります。
欧米のウェブデザインのトレンドまとめ
ユーザビリティを最優先に考え発展してきた欧米のウェブデザインは、フラットデザインからマテリアルデザインを生み出すにまで至り、その有用性はスマホの普及率がさらに増加するに従い、さらに顕著になることが予想されます。また、根本的なこととしてユーザビリティを最優先に考えるということは我々日本人にとっても学ぶべき点が大いにあり、日本国内におけるウェブデザインの方向性について考える上でも、欧米におけるウェブデザインの動向は常にチェックする必要があります。