アパレルEC業界のトレンド~D2C(Direct to Consumer)とは?

アパレルEC業界のトレンド~D2C(Direct to Consumer)とは?

インターネットの登場は商品の販売方法多様化のきっかけとなりました。業種に限らずさまざまな企業が形骸化した商品の販売方法を捨て、独自の販売方法を開発することによって、他社との差別化や業績のアップなどの成功を勝ち取ることを求められています。

このような新たに開発された商品の販売方法の中でもアパレルEC業界におけるトレンドとなっているのが、Direct to Consumerを意味する「D2C」です。 ここではその基本的な知識と周辺の動向について解説します。

ファッション業界でもリアルショップが減少している!?

アメリカのファッション業界において近年顕著になっているのが、リアルショップの減少です。例えば日本でも人気の高いアバクロンビー&フィッチやゲスなどのブランドは、2017年だけで共に60店のリアルショップの閉鎖を行い、また、ラルフローレンにいたってはニューヨークの旗艦店の閉鎖も敢行しました。また、これらのブランド以外にも2017年には既に破産法の適用を受けていたアメリカンアパレルブランドが全部で104店舗を閉鎖しており、ファッション系ブランドのリアルショップの減少は止まることを知りません。

このような傾向は日本においても徐々にその兆しがみえ始めており、中には将来を見越して早々にリアルショップを閉鎖し、ECメインの販売体系へシフトチェンジを行っているブランドも存在します。

EC業界の革命?D2C(Direct to Consumer)とは

リアルショップでの売り上げ減少やその閉鎖からは、新しいビジネスモデルも登場しています。特にD2CはEC業界に新たな革命をもたらすのではと思えるほど急速に普及しており、現在ではD2C専門の新たなブランドも数多く立ち上げられているのです。

D2Cの基本的な考え方は、従来の商品の製造から販売までのプロセスを徹底的に簡素化し、その過程で発生するコストをカットすることで商品の価格を抑えるという点にあります。そのため、D2Cを専門的に取り扱うブランドは商品の企画・製造から販売までのプロセスをすべて独自に構築しなければなりませんが、現在ではECサイトなどの制作・運営が簡単に行えるようになったことから、このようなD2Cは急速に普及したと考えられます。

一方でリアルショップを持たないことが多いD2Cブランドは、リアルショップを展開する有名ブランドよりもブランディングに不向きであるというデメリットもあることから、ブランドの名前を広く知ってもらうための施策を考案することが必要不可欠であるという特徴もあります。

D2Cの成功事例~4例

誕生して間もないD2Cですが、D2Cブランドの中には既に大きな成功を収めたものも存在します。続いてはその実例を4つご紹介します。

Bonobos

2007年創業のアパレルブランド「Bonobos」は、D2Cの創成期に礎を築いた重要なブランドのひとつといえます。同ブランドは男性向けのデニム以外のパンツの開発を出発点とし、「ninja」と呼ばれるオンライン上での独自の接客サービスが功を奏し、一躍有名となったのです。その結果2017年には、創設から10年しか経過していないにもかかわらずアメリカの小売り大手「Walmart」によって約340億円で買収がされました。

Warby Parker

D2Cのビジネススタイルで初めて大きな成功を収めたといわれる「Warby Parker」もまた、D2Cの創成期に登場した重要なブランドのひとつです。2010年にペンシルバニア大学の4人の学生によって創設された同ブランドはメガネをメインとして取り扱い、圧倒的なコストパフォーマンスの高さが大きな話題を呼びました。その結果、同ブランドは、2015年にAppleやGoogleを抑えてFast Company誌上で「最もイノベーティブな会社」に選ばれ、その成功を確実なものとしたのです。

LaFabric

D2Cの概念は日本国内にも浸透しており、既に高い知名度を手に入れたD2Cブランドも存在します。「LaFabric」はカスタムオーダーのスーツを中心に取り扱うブランドで、デニムやチノパンなどの商品も販売しています。同ブランドの商品は国内で製造しているにもかかわらず、流通において発生するコストカットを徹底して行っているため、販売価格は市場価格を大きく下回っており、低価格高品質を実現しています。

Knot

カスタムオーダーの腕時計を取り扱う「Knot」もまた、国内のD2Cブランドの中でも高い知名度を誇ります。同ブランドの商品もまた国内で生産がされているにもかかわらず、流通時のコストカットを徹底して行っていることから低価格高品質を実現しているのです。また、同ブランドの腕時計はパーツの組み合わせが8,000とおり以上にもおよび、その充実ぶりもまた大きな特徴となっています。

D2Cが成功している理由

D2Cブランドの多くが成功を収めている理由としては、第一に安価で質のよい商品が購入できるという点にあります。通常、安価な商品は素材の品質を下げることなどによって価格を下げることが多いですが、D2Cブランドの場合は流通におけるコストカットによって商品の価格を下げることに成功しているため、それによって品質が低下することはありません。

また、成功しているD2Cブランドの中には、商品を購入する際に斬新なWeb体験ができるよう独自のECサイトの構築に努めているブランドも多く存在します。例えば、上述の「Warby Parker」が開発した病院や店舗へ行かなくても視力検査ができるアプリや、「LaFabric」が開発した採寸をクラウドに登録するだけでスーツのネット購入ができるシステムなどはその好例といえます。

このようなブランド独自の斬新なWeb体験は、ブランディングの施策としても大きな力を発揮するため、ブランドの知名度を上げにくいというD2Cならではのデメリットを克服し、ブランドとしての成功にもつなげることができます。

アパレルEC業界のトレンドのまとめ

日本国内におけるD2Cは、現状ではニトリやセブン・アンド・アイ・ホールディングスなどが実店舗で提供しているPBが有名です。しかしながら、昨今ではファッションECにおけるD2Cブランドの進化も目覚ましく、今後もその動向からは目が離せません。

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