工場とカスタマーを直接つなぐEC~ファクトリエの挑戦

工場とカスタマーを直接つなぐEC~ファクトリエの挑戦

ファッションのオンラインショップを運営している方であれば、ファクトリエの戦略は知っておくべきでしょう。ファクトリエは、ファストファッションが注目を集めがちな日本ブランドの中で、一流の商品を生産し世界に販売しているECショップであり、これまでにない方法でファッション業界に革命をおこしているのです。ファストファッションでは当たり前である大量生産などは行わず、ものづくりにこだわっているファクトリエについて、ご紹介します。

工場直結のEC~Factelier(ファクトリエ)とは

ファクトリエの創業者である山田敏夫CEOは老舗洋品店の家に生まれ、大学在学中にフランスへ留学し、グッチ・パリ店で勤務しました。そこで海外ブランドの商品へのこだわりを見てきた経験をもとに、ファストファッションと逆行したものづくりへのこだわりが必要であると考えて、ファクトリエを立ち上げたのです。

ファクトリエは効率だけを求めるのではなく、非効率であっても品質を重視して商品をつくっています。製造を依頼する工場は日本国内で600以上。ホームページをもっていない工場を電話帳から探し、CEO自ら1軒1軒まわっているのです。その上で製造技術やこだわりなど多数の条件をクリアした工場のみと契約します。

ファクトリエのサイト内では、それぞれの工場のこだわりなどを紹介しており、ホームページをもたない工場に代わって顧客に発信しています。このように工場と顧客を直接つなぐブランドであることがファクトリエのコンセプトです。

また、工場とファクトリエの中間マージンをなくすため、通常であれば必要となる各地の店舗をもたず、セールも行いません。品質を重要視しながらも適正価格で顧客に商品を提供できるよう、中間マージンをカットすることにこだわっています

希望小売価格ではない「希望工場価格」を設定

ファクトリエでは、日本のブランドで通常定められている「希望小売価格」を設定していません。その代わり、製造している工場が設定する「希望工場価格」を提示してもらうのです。その価格でファクトリエが買い取り、ファクトリエはその2倍近くの価格で顧客へ販売します。

工場とファクトリエの間に中間業者がなくマージンが発生しないので、原価率は50%とファッション業界では驚きの割合になるのです。商社や卸業者などを挟まないので、顧客はクオリティの高い商品を一般的な流通価格の約半額で購入することができます。

一般的な中間業者を挟む方法を用いて、顧客へ安い価格で提供することだけを重視すると、製造工場への負担が大きくなってしまうでしょう。実際に山田敏夫CEOは、工場をまわる際にアパレル工場の厳しい現状を見てきました。

2年前の電話帳に掲載されていた工場の半数がなくなっていたこと、前月訪問した工場が廃業していた現状を目の当たりにし、顧客へ商品を安く提供するだけではなく、工場も利益を増やすことが必要だと感じたのです。そこで希望工場価格を設定する方法をとりました。

ファッション業界に革命を起こす~消耗から愛着に

リーズナブルで安定したクオリティのファストファッションが流行している日本では、新品同様のまま捨てられてしまう商品も珍しくありません。安価に仕入れるためメーカーが大量発注をしたけれど、在庫が余ってしまうことがあるのです。また商品を低価格で購入した顧客が、商品に愛着をもたずに、数回着ただけで捨ててしまうというケースもあります。

ファクトリエでは、日本のファッション業界における意識を「消耗」から「愛着」に変えていく革命を起こしたいと考えているのです。そのため、日本のオンラインショップでは行われていなかった手法をとりました。自社のECショップサイトで工場のスタッフと製造工程を公開したのです。

ファクトリエというブランドを世界で一流のブランドにしたいという想いがあるのはもちろんですが、たとえファクトリエ自体の名前が有名にならなかったとしても、ものに対する愛着を重視する考え方が消費者の中に広がっていけばよいとファクトリエは考えています。ファクトリエの商品を購入している顧客のなかには、こうした経営方針に共感をもっている方も多いのです。

広告宣伝を行わずにファンを増やしていく

ファッションブランドに限らず、商品を販売する企業ではさまざまな広告展開を行うのが一般的ですが、ファクトリエでは費用をおさえるために広告宣伝をしていません。営業や広告展開だけを行うスタッフはいないのです。ファクトリエが広告を出さずに売り上げを上げている理由はいくつかあります。

まず非効率でも愛着がもてる日本製の商品を販売することで、大勢の顧客を魅了するという信念をもっていることです。信念を曲げることなく、顧客に喜んでもらえることを第一に、高品質の商品製造にこだわり続けていることもファンが増えていく理由のひとつといえるでしょう。

ファクトリエでは、ファクトリエの信念に共感したファン同士が集まれる工場見学などの機会ももうけています。工場見学をきっかけに工場のスタッフと参加者が仲良くなったり、参加者のなかでもコミュニティができたりするのです。ただ商品を購入する客というだけではなく、コミュニティを通して仲間としての所属意識や知的欲求が満たされるのでしょう。

まとめ

ファクトリエは、ファストファッションによる大量消費という流れに革命をおこしているオンラインファッションブランドです。工場での「製造」や工場がもつ「こだわり」などを公開し、日本から愛着がもてる商品を届けることを信念としています。

他にも、世界中で人気のある漫画「ONE PIECE」やアウトドアブランド「パタゴニア」とコラボをしたり、船や書店などこれまでのファッション業界では見られなかった場所で販売を行ったりするなど、ものづくりと流通の交流の輪を広げ成長を続けているのです。

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