雑誌でありながらショップでもある~ELLE SHOPの目指すオンラインファッションとは

雑誌でありながらショップでもある~ELLE SHOPの目指すオンラインファッションとは

1945年にフランスで創刊され今や世界各国で知名度のある女性ファッション雑誌「ELLE」では、世界中のファッションブランドの商品が紹介されています。これまではクライアントとの競合を避けるために、ファッション雑誌はブランドや商品の紹介、コーディネート例などを読者に提供するだけでした。しかし「ELLE」は、これまでの常識をくつがえし、オンラインショップとしても展開を始めています。ファッション雑誌「ELLE」の目指しているオンラインショップとはどのようなものなのか、解説していきます。

「ELLE SHOP」の目指す世界とは

ファッション雑誌「ELLE」のオンラインショップ「ELLE SHOP」は2009年に立ち上げられた当時、ファッション系ECショップでは若い世代をメインターゲットに、カジュアル商品やコンサバ商品を取り扱っているところがほとんどでした。「ELLE」の読者はインターナショナルな感覚を持つ人が多かったのですが、このような読者層に向けたECショップが当時はありませんでした。そこでメディアとして消費者目線を大切にしたいという思いから、「ELLE SHOP」が作られたのです。

本来ファッション雑誌である「ELLE」では、ブランドからの広告料で収益を得ていましたが、これからは広告主だけでなく消費者からの支持を得ることでメディア本来の力を出すことができるのではないかという考えも持っています。「ELLE SHOP」で消費者に商品を購入してもらうことが成功することで、「ELLE」を支持している人の数などの目安にできるような指標づくりを目指したいという意図もあるようです。

商品を増やさない、安売りをしないオンラインショップ

実際に「ELLE SHOP」と一般のECショップとの違いはあるのかと、疑問に思う人は多いです。まず挙げられる大きな違いは、「ELLE SHOP」はブランドのプロデュースをエディターが行っているという点です。「ELLE」の世界観にふさわしいブランドを、エディターが世界中から自分で探し出しセレクトしています。そのため商品単価は一般のECショップに比べると2~3倍と高い価格が設定されていますが、他にはない商品なども見つけることができます。

また一般のECショップでは商品の入れ替わりが激しかったり、商品数を闇雲に増やし続けたりするところが多いですが、「ELLE」では闇雲に商品数を増やすようなことは行っていません。品揃えを多くするよりも、「ELLE」の世界にマッチしたブランドを置くという点を大切にしています。そのため「ELLE」の世界観を崩すことなく、消費者から得た信頼を守って品質の高い商品の提供をしていくことができるのです。

「ELLE SHOP」のマーケティング戦略

「ELLE」ではマーケティングに重要な役割を果たすWebサイトのデザインにも、エディターがかかわっています。Webサイトのクオリティや商品の見せ方など、すべて「ELLE」の独自の世界観にあった美しさと品位があるかというチェックをエディターが行っています。そして「お得感」を第一にしてしまうと「ELLE」の世界観だけでなく取り扱いブランドそのものの世界観やイメージを壊しかねないので、「ELLE SHOP」では価格を下げるよりもエクスペリエンスといった付加価値を高めること、そして既存顧客を大切にするためにサービスを向上させるための工夫を凝らしています。

さらにネット広告も積極的に利用しており、コンバージョンや費用効果、獲得単価などに注目しつつアフィリエイトなどの効果も考慮して、リターゲティングとして見ず、評価を分散するという分析を行っています。TwitterやFacebookなどのSNSも積極的に利用していますが、必要以上に目線を下げるようなことはせず、「書き手の顔が見える」「ELLEのファンになってもらう」ことを意識した書き込みをすることで、フォロワーの数も順調に伸ばしています。

「ELLE SHOP」の多方面での展開

さまざまなマーケティング手法を試している一方で、「ELLE SHOP」は多方面での連携や展開を図っています。2016年3月2日から、「ELLE SHOP」はミドルエイジ女性をターゲットにしたwebマガジン、ミモレ内にあるコーナーに、ミモレの編集長や編集部員が選んだアイテムのコーディネートという形で出品しています。コーディネートに使用している商品は、「ELLE SHOP」にリンクしており、ユーザーはすぐに購入することができるという仕組みを作っているのです。また逆に「ELLE SHOP」内ではユーザーに人気のコンテンツにミモレ編集部がゲストエディターとして登場するなど、相互でPR活動を期待できる企画を行って新規ユーザー獲得を目指しています。

また2015年からは、「ELLE SHOP」内でメンズ商品の取り扱いも行っています。「大人の女性が家族やパートナーに着て欲しいメンズウェア」というコンセプトの元、ウェアだけでなくファッション雑貨など幅広いラインナップで、取り扱いブランドも順次増やしていく予定です。男女の境界を設けないで、エディター目線で「ELLE」独自の世界を構築していく、それが「ELLE SHOP」の本領と言えるでしょう。

まとめ

多くのファッション雑誌がクライアントとの競合を回避するために、ECショップを作り商品を販売することを避けていました。しかし「ELLE」は消費者目線第一に、ファッション雑誌業界ではタブーとも言われるECショップ展開を行っています。「ELLE SHOP」の目指しているオンラインファッションとは、消費者目線でありながら信頼性が高く、独自の世界観を壊すことのないブランドのファッション、そして男女の境界を設けないエディター目線の独自のファッションと言えるでしょう。

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