EC化率とは?アパレル業界の高EC化率からみる将来性

EC化率とは?アパレル業界の高EC化率からみる将来性

広義的な販売業においてECを導入することは単純により多くの顧客を囲い込めるということだけでなく、企業自体の知名度の向上などといった効果も期待ができます。そのため、すでに多くの企業では事業のEC化を率先して行っており、その効果が企業全体としての業績に如実に表れる例も珍しくなくなってきています。

このような事業のEC化においてひとつの重要な指標となるのが「EC化率」です。ここでは、このEC化率の概要について解説するだけでなく、特にアパレル業界に限定したEC化率を例に挙げ、その将来性について考察したいと思います。

EC化率とは?

ECとは簡単にいえばネット販売のことであり、EC化率とは企業や業界全体などの特定の範囲内で行われている事業のうちECが導入されている部分がどれだけの割合を占めているのかを表す指標を意味します。

例えば、とある企業の年間の全商取引額が100億円で、そのうちEC化された部門での取引額が10億円であれば、その企業のEC化率は10%ということになります。ただし、実際の企業では特定のひとつの部門のみがEC化されていることはなく、EC化された複数の部門の取引額が全取引額において占める割合を算出しなければならないため、その計算はさらに複雑となります。

また、このEC化率は企業だけでなく、国や業界などさらに大きな範囲を対象として算出されることもあるため、その数値は企業という枠を超えてECの普及率を図る際にも重要な指標となります。

国内のEC化率をみると

ネットオークションのような個人間で取引が行われる「C to C市場」などを除外した「B to C市場」における日本国内のEC化率は、2015年が4.75%、2016年が5.43%と順調な伸びを記録していましたが、2017年には5.79%とその伸びが鈍化するという現象が発生しました。

この要因としてはさまざまなことからが考えられますが、2017年には市場規模に大きな影響を与えるほどの新たなサービスが登場しなかったことや、オムニチャネル化の普及によりECと実店舗の境界があいまいになり、例えばネット注文をした商品を店頭で受け取るケースなどをECでの売り上げとして計上しないことが多くなったことなどがEC化率にも大きな影響を及ぼしたことが考えられます。

そのため、日本国内における実際のEC化は、その数値ほど鈍化しているわけではなく、順調に規模を拡大していることが考えられます。

気になる海外のEC化率は

現在では越境ECなども積極的に行う企業が増加していることからEC化率は国内だけでなく、海外の数値とも比較しなければなりません。

例えばアメリカの場合、2017年のEC化率は約10%といわれており、日本よりもEC化が進んでいることが分かります。このことには、アメリカは国土が日本の比ではないほど広く、実店舗の出店を積極的に行うより、EC化を促進したほうがより効率的に顧客を囲い込めるということが大きく関係していると考えられるでしょう。

また、中国はアメリカよりもさらにEC化が進んでおり、2017年のEC化率は約15%にも達しました。この要因としては、中国もまた国土が広いということが挙げられますが、その一方で中国は越境ECを積極的に行っているという点もこの一因となっており、そのことはアリババのような巨大企業が越境ECによってさらに多くの顧客を獲得していることからもうかがい知れます。

このようにEC化率はその国の風土や企業の経営方針の傾向が大きな影響を与えることもあり、日本のEC化率がこれらの国々に比べて低いことには、日本の国土が狭いことや、越境ECなどを行わず、実店舗をメインとして商品の販売を行ってもある程度の利益は上げられるという日本ならではの特徴が関係していると考えることもできます。

EC市場として有望なアパレル業界

アメリカや中国に比べてEC化率が低い日本においてアパレル業界は、国内のEC化率を大幅に上げることが可能な有望な業界といわれています。その理由としては、現状でもEC業界におけるアパレルの占有率が群を抜いており、国内のECで取り扱われている商品の第1位が1兆6,454億円を売り上げている「衣類・服装雑貨など」であることが挙げられます。

また、アパレル業界がEC市場で有望視されている理由としては、アパレル商品自体がECに向いているということも挙げられます。特に近年では動画サイトやテレビショッピングなどを活用すれば、実店舗を設けなくてもアパレル商品をより多く販売することが可能となっており、アパレル業界に限定したECサイトの発展に対しても期待されています。

一方で、EC化率の大幅に上昇させるためには、社会全体で大きな話題を呼ぶような画期的なサービスの登場も必要となります。この点に関してファッション業界では2018年に大きな話題を呼んだ「ZOZOSUIT」などが具体例として挙げられ、その性能のさらなる向上が図られればEC化率の大幅な上昇も期待できるでしょう。

まとめ

ECは商品の販売方法に大きな変革をもたらし、市場全体にも大きな影響を及ぼします。そのため、このECの普及率を表す指標であるEC化率という尺度で市場をみてみると、全く異なる市場の姿がみえてくるかもしれません。特に今後確実にEC化が拡大していくファッション業界に関しては、その動向をより注視していく必要があります。

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