成功事例から学ぶオムニチャネル~効果のあったオムニチャネル戦略を見る

成功事例から学ぶオムニチャネル~効果のあったオムニチャネル戦略を見る

現在のアパレル業界にとって、オムニチャネルは無視することができない重要な経営方法ですが、まだオムニチャネル化について検討していない企業もあるかと思われます。すでにアメリカではクロスオーバーに販売チャネルを展開している企業が増えています。Amazonはリアル店舗を取り込み、逆にウォルマートはECサイトを傘下に組み込みました。

国内でも数年前よりセブンイレブンが挑戦していますが、まだ確固たる成果はみえません。これからはオムニチャネルを早めに検討する必要があります。

オムニチャネルとは何か

オムニチャネルとはチャネル、つまり販売経路を複数用意した上でそれらを統合・連携する販売方法のことをいいます。それまではマルチチャネルという言葉もありましたが、オムニチャネルとマルチチャネルは似ているようで異なります。

販売経路を複数もつケースとして、

  • 実店舗
  • テレビ通販
  • ネット通販
  • SNSの限定販売

などがあります。
複数という意味をもつ「マルチ」のチャネルがこうした販売方法や経路ですが、ネット通販と実店舗はそれぞれ異なる商品であったり在庫は別々に管理してあったりしているというのが多くあるケースです。一方すべてという意味をもつ「オムニ」のチャネルという考え方は、すべての販売経路を用意しつつ統合されているというものです。

例えばこのような在庫管理がオムニチャネルにあたります。

  • 実店舗で在庫がなくなった場合にオンラインの在庫から補充する
  • 各店舗の在庫をネットで確認できる
  • SNSで宣伝し、ネットショップや実店舗の販売につなげる
  • ネットで購入したものを実店舗で受け取る

それぞれのチャネルが個別ではなく、すべて連携がとれているというのがオムニチャネルの考え方です。オムニチャネルのメリットとして、SNSなど本来お店に興味のなかった顧客へのアプローチの機会が増えること、また共通した在庫管理を行うことで販売ロスを防ぐことが可能となります。

バーニーズNYにみるオムニチャネルの成功例

アメリカの百貨店のバーニーズNYでは2016年2月にフラグシップストアをマンハッタンのチェルシーに移転した際と同時に、位置情報を活用しオンラインと実店舗を融合しマルチチャネル展開をしています。

位置情報を設定した状態で店舗に入った顧客のスマホにウェルカムの通知が届いてバーニーズNYアプリが起動し、お店側が来客を把握できます。またアプリには現在行われているプロモーションの告知などが届きます。店内滞在中にアプリで限定商品の告知を見ることで、よりお店がアプローチをかけることが可能になるのです。店舗側もスタッフがiPadを携帯しているので、情報を調べ来店した顧客に合わせた接客が可能となります。

顧客側としてもメリットがあり、購入時にアプリを会員カードとして利用し「B」というポイントがたまりBの獲得数により特定のサービスが受けられ、アプリで過去に実店舗で購入した商品を見ることなどが可能です。

メイシーズにみるオムニチャネルの成功例

アメリカの小売企業であるメイシーズもオムニチャネルを早い段階から取り組んでおり、他の小売企業も影響を受けているようです。CEOがオムニチャネルを展開していくと宣言をしたという経緯もあり、オムニチャネルのさきがけともいえます。

大きなシステム改革を行い、店舗とネットサイトの在庫を一元管理するようにし、それに合わせてプロモーションなどもマーケティング部が会社全体を踏まえた上で行うように変更しました。店舗、ネットサイトと共に同じ在庫管理であることから、お店ごとのキャンペーンを打って差をつける必要がなくなったためです。

この変化に伴い、スタッフの評価体系も変更し、部門内で上を目指すのではなく会社全体を見据えて戦略を考えられるスタッフを評価するようになりました。また在庫管理が一元化された事例として、お店で在庫がなくてもその場でお店がネットでの配送を手配することができるようになっています。

配送も店舗やネットを問わず、一番早い方法を選択しているので、場合によって当日配送も可能です。店舗からネット配送できるのでオンライン倉庫に在庫がないのにオンライン販売している商品があるというケースもあります。メイシーズはこのオムニチャネル化で、改革の2011年から2013年までで、40%の売上げ増に成功しています。

DoCLASSEの成功例~店舗&ウェブサイトxコールセンター

DoCLASSEはもともと2007年にカタログ通販からネット販売を始めた国内のファッションブランドです。
初期にSNSを利用していましたが、メインターゲットが当時SNSを利用していない40代から50代の層であったことからSNSは閉鎖し、ネット通販を開始したという経緯があります。

もともとは店舗がなくネット通販からのスタートでしたが、顧客が求めている「試着のため」に実店舗の運営を始めました。しかも店にいけない顧客のためにある方法で試着をしてもらうことにしたのです。

その方法とはコールセンターのオペレーターが代わりに試着するというものでした。オペレーターは同世代であることはもちろん、同じ体型の人が試着をして通話上で状況を話すという方法により、実店舗とネットでの購入が一体化できているという珍しいケースです。

一般的にはコールセンターの対応は外注化する企業が多いなか、DoCLASSEはすべて社内で対応しています。社員のステップアップも垣根がなく、もとはコールセンターの勤務から始まったスタッフが、実店舗をオープンするときの店長に抜擢されたという方もいるのです。

効果のあったオムニチャネル戦略まとめ

オムニチャネルの事例では海外企業が注目されがちですが、日本でもセブン&アイやイオンなどオムニチャネル化している企業があります。また最後にご紹介したDoCLASSEは、日本で始まったアパレル企業で、始めは婦人服の取扱だけだったカタログ通販会社がまだオムニチャネルという言葉もあまり知られていなかったころから、自然とオムニチャネル化していた事例ともいえます。

生活用品と異なり顧客が試着や着た印象を知りたいという要望があるアパレル業界は、特にオムニチャネル化と相性がよい業界です。在庫管理や配送ルートなど整備を整えるには課題も多くありますが、他企業のオムニ化を実現する前に早めに準備をしておきましょう。

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